AGA治療を行うときに、詳しい治療の内容や推奨度などが書かれている男性型脱毛症診療ガイドラインは多くのクリニックで医師が指標として用いています。このガイドラインは日本皮膚科学会が作成しているものですので信頼性がありますし、どんどん新しい治療法も取り入れて比較検討していますので、今後クリニックでどういった治療を導入するかという判断基準としても役に立てられています。このガイドラインでは、推奨度はA~Dに分かれており、Cが1と2になっていますので、全部で5段階評価となります。順に強く勧められる、勧められる、行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない、根拠がないので勧められない、強く勧められないという推奨度になっていますが、個人差もありますので、D判定になっている治療法を行っているケースも少なくありません。このガイドラインは毎年新たに作成されており、新規導入された治療などに関しても推奨度をつけるようになっていますので、最新式の治療を行っているクリニックでも重宝されています。
この中で、C1の十分な根拠がないという推奨度に分類されているアデノシン外用とは、AGAの原因に大きく関与しているテストステロンの分泌量を抑制させる効果があり、有効成分が毛髪成長を司っている毛乳頭に直接作用して、発毛促進因子(FGF-7)の生産量を高めて発毛を促進すると同時に、産毛のように細くなってしまった髪の毛を太く丈夫な髪に成長させるメカニズムを補助します。アデノシンは長期的に使用しても副作用がほとんど見られないことから、安全性の高いAGA治療としても注目を集めていますし、ホルモンバランスの乱れによって起こるヘアサイクルの短縮化を正常な状態に戻すことができますので、長期的に見ても髪の毛を増やしたり再生させる治療が利用できなくなるといったリスクを抑えることができます。
アデノシン外用が、このように安全性が高く、臨床試験でも高確率で発毛しているといわれているにもかかわらず、十分な根拠がないと評価されるC1になっているのには、AGAの発症原因が一つだけではなく、複雑な要素が絡み合って発症している可能性も高いということも関わっています。 民間企業でもアデノシンを使用した育毛剤などを使用しているメーカーは少なくありませんが、クリニックでの治療に使えるほどには信頼できる機関で試験されているケースが少ないということから、現時点では一般的には効果が高いと認められるものの、治療として実際に使えるかどうかというところまでは判断がつかない状態です。しかし、今後信頼できる試験を繰り返した結果も高い発毛作用が認められたという場合には、さらに評価が高くなる可能性もありますので、特に問題なく使うことができ、自分で抜け毛や薄毛が改善されたと感じられるのであれば、ガイドラインの評価はあまり気にせずに市販の育毛剤などを利用したり、クリニックで継続して治療を受けるようにするのも良いでしょう。
このように、ガイドラインでは発毛を促す仕組みがきちんと判明していたり、使用されている薬剤の構造や安全性が確立されている場合であっても、推奨度が低い治療もあります。実際に検査を受けて、自分の体質や抜け毛の原因が分かった上で受けてみたいと思われる治療があれば、クリニックの医師と良く相談した上で、推奨どの低い治療を受けてみるのもよいでしょう。推奨度が低いからといって安全性に問題があるというわけではありませんので、ガイドラインの評価ばかりを気にせずに、これらを指標として参考にしながら、複数の治療を組み合わせたり、試して経過観察をするなどの工夫をしてみましょう。