男性型脱毛症は主に男性に見られる頭皮における脱毛の状態を指しAGAとも呼ばれます。男性の頭皮の脱毛は古くから男性の悩みでもあり、その発生の構造も近年ではかなり解明されており、より効果のある薬も登場していますが、それ以前としてさまざまな育毛剤などが販売されています。特に育毛剤の多くは科学的な裏付けがないものも多くあり、また中には皮膚に重大な悪影響を及ぼすものもあるなど問題のあるものも多くあり、特に男性型脱毛症に対して効果が認められたミノキシジルの登場により、科学的に実証されたものとそうでないものを専門的にわかりやすく評価したのが日本皮膚科学会が発表した男性型脱毛症診療ガイドラインです。
男性型脱毛症診療ガイドラインでは、5段階評価となっており、上から「A」「B」「C1」「C2」「D」となっています。このガイドラインの対象となっているのは、20代から40代の若い男性で生え際の後退や頭頂部の薄毛などに対しての有効性の有無となっており、Aでは強く勧められる、Bは勧められる、C1は考慮していいが十分な根拠なし、C2は根拠なく勧められない、Dは行わないように勧められるとされます。なお、Aに分類されているのは「ミノキシジル」で、C1では「アデノシン」や「t-フラバノン」、「塩化カルプロニウム」、「サイトプリン」、「ペンタデカン」、「ケトコナゾール」などが分類されています。塩化カルプロニウム外用とは、C1に分類されるので、根拠は乏しいものの考慮しても良いとされる発毛のための有効成分といえますが、塩化カルプロニウム外用は、もともとは胃の働きを活発化して胃液の分泌を高める効果があり内服薬としては慢性胃炎や胃下垂の薬として使われていましたが、一方で外用薬としては抜け毛症の薬として使われているものですが、発毛に至る仕組みとしては、局所血管拡張作用があるためで、外用薬として頭皮に散布することで、血管を拡張して血液の流れを良くし、その結果、発毛に必要な栄養が乳毛頭に届きやすくなり、抜け毛防止や発毛促進を行うというものになります。ただし個人差が大きいため、ミノキシジルなどに比べるとややその効果は限定的といえます。
一方で、副作用もあり血管拡張作用にともなう発汗やそれにともなう悪寒やほてりなど、薬剤による頭皮の異常として、発疹や発赤、腫れ、かぶれ、かゆみなどがあり、また場合によっては吐き気や嘔吐といったものも現れる可能性がありますし、特に血管拡張作用がある薬ですので、心臓病や高血圧などの循環器に持病がある人には、使用する前に医師または薬剤師に相談するのが無難です。なお、塩化カルプロニウムが含まれている薬としては、フロジン液があります。フロジン液は脱毛症や白斑用の薬であり、1mL中塩化カルプロニウムを50mgを含有している、緑色のアルコール性外用液です。添加物としてはプロピレングリコール、dl-リンゴ酸、水酸化ナトリウム、エタノール、黄色4号(タートラジン)、青色1号、香料などが含まれています。このフロジン液は、濃度が高いため医師の処方が必要であり、気軽にドラッグストアなどで購入することはできませんが、円形脱毛症などの抜け毛症の症状があれば、保険適用対象の医薬品なので安く入手することが可能です。
一方で、フロジン液ほどの濃度はありませんが、塩化カルプロニウムが含まれている育毛剤として第一三共ヘルスケアが発売している育毛剤の「カロヤン」シリーズがあります。カロヤンでは1%の塩化カルプロニウムが含まれていますが、「カロヤン ガッシュ」では2%に増やされており、血行促進作用が強化されています。