男性の薄毛の大半は、生え際部分が後退して頭頂部が軟毛化するという男性型脱毛症(AGA)と呼ばれる症状で、思春期以降に分泌量が急増する男性ホルモンの一種テストステロンがⅡ型5α還元酵素に変換されて出来るDHTという物質が前頭部から頭頂部にかけての毛根の内部にある毛乳頭細胞のレセプターと結合したことにより、通常であれば2年から5年程度は持続する毛母細胞の成長期が半年程度にまで短縮されてしまい、皮脂の分泌量も急増することにより短い状態で抜けてしまうという内容です。
この症状に見舞われる割合は国や地域により異なっていますが、日本人男性の場合は20歳代の後半から30歳代にかけて著明で全体の約30パーセント程度と考えられており、毛乳頭細胞のレセプターの感受性が発症率に関係していると推測されています。
頭髪は漢方では血の余りと表記されるように、基本的には生命活動を行うために使用した栄養素の残りの部分により構成されるので、仮に全ての頭髪がなくなったとしても健康へ悪影響が及ぶようなことはなく、急性の円形脱毛症などのごく一部の症状を除いては医療機関では治療の対象としては認識されていませんでした。しかし、外見のイメージを大きく変えてしまうので深刻な悩みにつながるケースもあり、実際に多額の費用をかけて科学的な根拠が一切ない民間療法を受けている人も少なくはありません。
この様な状況を改善するために、皮膚科学の社団法人の日本皮膚科学会が2010年に発表したのが男性型脱毛症診療ガイドラインで、標準的治療法を促進するということと科学的根拠に基づいた情報を選び出すということを目的としています。この日本皮膚科学会による男性型脱毛症診療ガイドラインでは、行うよう強く勧められるという意味のA、行うよう勧められるというB、行うことを考慮しても良いが十分な根拠がないC1、根拠がないので勧められないC2、行わないよう勧められるDの5段階の推奨度により、育毛剤に配合されている成分や薄毛治療を分類しています。その中で最も高い評価を得たのが、男性型脱毛症の内服薬のプロペシアとアメリカでは20年以上も前から薄毛の治療薬として使用されてきたミノキシジル外用で、共に行うよう強く勧められるという推奨度Aに分類されています。
ミノキシジルは元々は降圧剤として開発された成分であり、後に脱毛症に対しての改善効果を期待されたことで薄毛の治療薬として使用されるようになったという経緯をたどっており、最も最初に販売されたのがロゲインです。そして、日本製のミノキシジル外用として知られているのがリアップで、こちらは使用感において優れているという点が特徴です。また、角質層浸透させる成分や成長因子などミノキシジル以外にも工夫を施しているのがポラリスです。
これらのミノキシジル外用を使用すると初期脱毛という減少に見舞われるケースが報告されていますが、これは頭髪の成長サイクルが正常化する際に起きる一時的な症状であり、大抵は1カ月程度で収まるのでそれほど心配する必要はありません。これは、休止期や退行期で停滞していた頭髪が成長期に移行したことにより、新しく作られた頭髪により押し出される様な形で抜けてしまうという内容で、しばらくすれば頭髪は健やかに成長することになります。この様に、非常に高い効果が期待できるミノキシジル外用の作用機序については現在でも明確に解明されたわけではありませんが、毛乳頭と毛母細胞という頭髪の成長に関与している部分を活性化することにより発毛を促進させると考えられており、頭髪以外にも作用するので体毛の増加という副作用が報告されています。